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本日は2月1日に東南アジアのミャンマーで発生した「政変」についての話題となります。
海外駐在をしていると、必ず様々なリスクが伴います。ここでは、そのリスクの代表例とも言える、政変についてまとめていこうと思います。
タイトルでクーデターと表現しておりますが、今回の政変について、ミャンマー国軍による暴力的な手段の行使があったのかという点については賛否分かれる部分であるとも思いますので、以降は政変と表現していくことにします。
①ミャンマーという国について
ミャンマー連邦共和国は、東南アジアに位置し、バングラデシュ、インド、中国、ラオス、タイと国境を接する立地であり、人口は約5,400万人(世界銀行2018データ)の国である。
その昔は「ビルマ」と呼ばれており、最大都市ヤンゴンも「ラングーン」というとわかる年配の方も多い。
大まかな歴史として、(参考:外務省HP)
◆19世紀に英国領となるが、アウンサン将軍らの活躍により、戦後1948年にビルマ連邦として独立を果たす。
◆1962年に軍事クーデターによりネ・ウィン将軍(後の大統領)による社会主義政権が成立し、閉鎖的な経済政策により長期的な経済停滞状況を引き起こすこととなった。
◆1988年国軍がクーデターにより政権を掌握、経済開放政策に転じる。ただ、民主化運動の弾圧、その指導者であるアウンサン・スー・チー氏(アウン・サン将軍の長女)の拘束や自宅軟禁なども有り国際的非難を浴び、米国やEUが経済制裁措置及び金融制裁措置を実施。
◆2010年に新憲法に基き総選挙を実施、スー・チー氏の自宅軟禁も解除され、2011年テイン・セイン大統領による民主政権が発足し経済開放政策を断行。その後のEU・米国の制裁緩和や一時停止へ繋がった。
という流れであるが民政移管された2011年からは、各国投資も積極化され、「最後のフロンティア」と言われた同国への注目は高まる一方であった。
2011年以降、アウンサン・スー・チー氏が率いる政党、国民民主連盟(NLD)による政治がおこなわれてきたが、軍政時代に作られた憲法により、国会議員には非選挙軍人枠が25%設けられていたり、3人いる副大統領のうち1名は軍推薦であったりと制約がある中で、経済開放、民政移管を国際社会へ示しながら政権運営していくというかなり難しい舵取りを強いられてきていた。
直近では少数派イスラム教徒難民問題(ラカイン問題)を含めた少数民族とビルマ族との対立問題が国際社会からの避難を浴びており、まさに軍と国際社会の板挟み状況が続いていた。
②今回のミャンマー国軍による政変について
今回の政変について発端となった2020年11月の総選挙から関連する情報について、異端児リーマンが把握している情報でまとめると以下となる。
A)今回の政変までの状況
◆2020年11月にアウンサン・スー・チー氏率いるNLD党が総選挙で大勝、国軍系野党は大敗し、選挙後国軍は860万人分の二重投票等の不正があったと主張
◆1月26日国軍広報官が記者会見上の質疑応答でクーデターの可能性を否定しなかったことから、国内に緊張が走る
◆更に、その後国軍のミン・アウン・フライン総司令官が国防大学の学内演説で、憲法廃止を辞さないとも受け取れる発言
◆(国内のクーデター懸念に対し)1月30日、国軍が憲法順守の方針をあらためて表明し、事態は一旦沈静化へ
◆2月1日現地時間午前4時、軍関係者がアウンサン・スー・チー氏自宅を訪問し、同氏を拘束、又大統領を含むNLD政府閣僚、議員、党員も多数拘束
◆その後、国軍放送局にて国家緊急事態宣言の規定に基づき、国の司法・立法・行政の権限が大統領から国軍司令官に委譲された旨発表
◆国軍は、総選挙やり直しを主張、最長1年この政権移譲に効力があることを説明している状況
B)2月1日の現地情報(現地駐在の知人情報、一般情報等)
◆携帯電話回線は朝からすべて遮断 →夜には復旧した知人もいた
◆テレビ・ラジオ放送も国軍による電波遮断により朝から国軍関連情報以外放送されず、一部ネット記事へのアクセスも遮断
◆一部のインターネットプロバイダーを除いて、プロバイダー系データ通信も遮断。
◆ヤンゴンでは、日中スーパーでの食料の買い占め、又銀行へ詰め寄る市民が多発。(ただ、ヤンゴン市街地で暴動等は一切ない。)
◆現地日本大使館からは日本人駐在員向けに不測の事態に備えた自宅待機連絡が送付されている状況。
③今回の政変に見る海外駐在員のリスク
現時点、暴動等騒動は発生しておらず、市民含めて冷静な対応をとっているようであるが、大多数の国民が支持しているアウンサン・スー・チー氏を拘束してしまったことから、NLD支持者側からの過激な行動が今後起こりえないとは言い切れない。
そして、何より不透明なのは、国軍はこの政変状況で総選挙をやり直し、議席数を増やせると思っているのかという点であり、今後国軍の動きについてもどう事態を収束させていくのか、見守っていきたいと思っている。
現時点、現地の駐在員への待避命令は出ていないようであるが、今後同国が治安悪化に進まぬことを心から願っている。
又、異端児リーマンを含めた、海外駐在員とその帯同家族は不測の事態に直面した際にどう初動を取っていくのかという点は、日頃様々な角度から話をしておく必要があることに改めて気づかされるものであった。
▼Success is doing, not wishing.▼
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