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本日は、マズローの欲求の5段階説についての考察となります。
心理学の理論であるこの欲求の5段階説は、正直これまでの人生ではあまり馴染みがなかったのですが、仕事上でマネジメントに応用したり、社員のモチベーションを上げるための検討の際に活用されたりもするようです。(そう言われると昔どこかの外部研修などで目にしたことがあるような無いような、という感覚もあります。)
ここからは、マズローの欲求の5段階説についてまとめた上で、私がアーリーリタイアを選択肢の一つとしたことへの心理的アプローチとして、この説に当てはめてみたいと思います。
①欲求の5段階説とは?
欲求の5段階説は、アメリカの心理学者アブラハム・マズロー(1908~1970)が人間の欲求に対する心理を理論化するという心理学のアプローチから唱えた説である。
この欲求の5段階説では、人間の欲求は「生理的欲求」→「 安全の欲求」→「社会的欲求」→「承認欲求」→「 自己実現の欲求」の五段階に分けることができ、それぞれの欲求が 1つのピラミッドを構成しているとされる。そして、 人間はこの低い階層の欲求が満たされることによって、自然に次の段階の欲求を求めるようになるという考え方である。
生理的欲求
生理的欲求とは一番低い欲求レベル(第1段階)であり、生きていくための本能的な欲求とされている。具体的には三大欲求である、食欲・睡眠欲・性欲や、その他排せつ欲などであり、人間だけでなく動物もこの欲求の満足を求めるものである。人間においても最低限の欲求レベルであり、日本では憲法によって保障されているものになる。
憲法 第25条:すべての国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。
安全の欲求
安全の欲求は生理的欲求の次の段階(第2段階)であり、安全・ 安心・安定した暮らしをしたいという欲求とされている。一例として、乳幼児が母親と離れると泣いたり暗闇を怖がるなどの現象はこの安全の欲求段階にあるが、この点についてはその後成長するにつれて、次の欲求段階へ移行していくことになるとされる。
社会的欲求
社会的欲求とは安全の欲求の次の段階(第3段階)であり、集団に所属したり、仲間を得たいという、孤独感や社会的不安から逃れるための欲求である。
承認欲求
承認欲求とは社会的欲求のさらに次の段階(第4段階)であり、集団や組織の中で認められたい、 評価されたいという欲求の事である。会社でよい評価を受けたい、出世したいというものや、SNSで友人グループからいいねを獲得 したいと考えるようなことが当てはまりそうだ。
※この承認欲求には、これら他人からの承認だけでなく、その先には自分自身を認めるというような自己承認欲求もあるとされている。
自己実現の欲求
5段階の最上位である自己実現の欲求(第5段階)とは、なりたい自分になることを目指したり、自分だから出来る事を考えたり、自分らしく生きていこうとしたりと、自らの可能性や目標を達成したいという欲望である。
※のちにマズローは第6の欲求として「自己超越の欲求」 というものを追加している。これは自分以外のものへの貢献や理想の実現を指しており、富豪が大金を慈善事業や団体へ寄付するようなケースを指しており、自己実現の欲求よりも更に一段階上の欲求と位置付けられている。
この欲求の5段階説はそれそれの性質によって3つの分類で分けら れる。
❐物質的/精神的分類
物質的欲求は生理的欲求、安全の欲求とされ、 精神的欲求は社会的欲求、承認欲求、自己実現欲求とされる。物質的欲求は生命維持に必要なまさに物質的に必要となる欲求( 表現が難しいのであるが)であるが、一方の精神的欲求というのは心の充足という毛色のものである。
❐外的/内的
外的欲求は生理的欲求、安全の欲求、社会的欲求とされ、内的欲求は承認欲求、自己実現欲求とされる。外的、内的はその文字通りの意味であり、外部環境に対するものと内面を満たそうとするものの違いである。
❐欠乏/成長
欠乏欲求は生理的欲求、安全の欲求、社会的欲求、承認欲求とされ、成長欲求は自己実現欲求とされる。 欠乏欲求はないものを欲しがるものであり、 成長欲求は欠乏が全て満たされた後に自分を研ぎ澄ませ、成長させていくというものであるとされる。
因みに、このマズローの欲求の5段階説へはいろいろ批判的な見解を示す人もいるようで、あくまでこの説はアメリカで当てはまるものであり、日本では安全欲求が最上位にくるべきだというような論を唱える心理学者もいるようである。
②欲求の5段階説と仕事、アーリーリタイアについて
以前の記事でも、人はなんのために働くのか?という価値観について触れたことがある。
↓以前の記事「リタイアの考察と仕事観」
hereticsalaryman.hatenablog.com
また、国でも世論調査として「国民生活に関する調査」を内閣府がまとめており、令和元年度に約5,500人へのアンケート結果を公表していた。その中で、働く目的は何か?という項目があり、その結果は以下となっている。
1位 お金を得るため 56.4%
2位 生きがいを見つけるため 17.0%
3位 社会の一員として務めを果たすため 14.5%
4位 自分の才能や能力を発揮するため 7.9%
お金を得るためというのは、生きていくためでもあり、より良い(安定した)暮らしをするためという事が含まれているのであるが、この調査結果でも過半数の働く目的がこちらであった。
2位以下については、お金以外の価値観であり、自己実現を目指していると言えるのかもしれない。アンケート結果で実に約4割もの人がこの段階にいたというのも意外であった。
マズローの欲求の5段階説において、仕事における欲求の達成度合いとして第5段階の自己実現の欲求を達成している人は、その仕事がいわば天職であると解釈できる。
なりたい自分を実現したり、自分だから出来ることを仕事の中で実感できる人は、働くということが人生そのものであったり時に生きがいなのだと考えられる人だとも言えよう。
ただ前出のアンケートの通り、多くの働く方にとって仕事はお金を得るためにやっていること、すなわち欲求の5段階説でいうところの第1段階(生理的欲求)〜第2段階(安全の欲求)にあることになる。
※あくまでこれは仕事をこの説に当てはめた場合の達成度であり、人生の他の尺度では更に上の欲求段階にいるケースもあると理解している。マズロー自身も、自己実現の欲求を持っていない人間はおらず、この欲求がないと感じている人間はただその存在に気づけていないだけであると主張している。つまり人は仕事内でないにしても、人生のどこかの部分ではこの第5段階の欲求を持っていると言えるのであろう。
一方で、お金のために働いている人(生きていくために働いている人)にとって、仕事の中で第3段階以降の欲求がないのかというと、必ずしもそうとは言いきれないのではないかとも考えている。
異端児リーマンも何のために働くのか?という問いに対しては、お金のためであり生きていくためというのが真っ先に思い浮かぶ。
一方で、現在の仕事の中でも、
・より評価されたい
・どうせなら社会の役に立ちたい
・なりたい企業人の姿を描きそれを目指したい
という思いを持っている。
今の仕事が嫌いではないということが前提になっているのだと思うが、せっかく同じ時間の労働をするのであれば、前向きにマイペースながらも一所懸命に取り組もうと捉えているのだと思う。
つまり、生きていくために働いている(=第1段階〜第2段階の欲求を満たすために働いている)のであるが、その中でもしっかりと第5段階である自己実現の欲求をも目指しているのである。
以前の記事でも記載したが、仕事が唯一無二の生きがいという方もおられると思う。その方々は自己実現の欲求を満たす場は仕事しかないケースも多く、(生きていくためではなく)一生現役という形を取るのかもしれない。
私の場合も「どうせ生きていくために働くのであれば」その中でも自己実現していきたいと考えているが、やはりお金のために働いている部分が大きいため、その先を生きていくための資産ができた場合、アーリーリタイアが選択肢となりうる。
つまり経済的自立・自由(FI)を達成したその時点で仕事継続か、他のやりたいことのために早退するかを選択することにしている。
※若年時ではなく50代での選択を前提。
この点は、形は違えど、仕事という枠だけではなく、人生というもう少し大きい括りでの自己実現の欲求を追求しているのだと言えるのかもしれない。
今回マズローの欲求の5段階説に触れることで、自分の仕事観や人生観がどの段階に来ているのかという視点で見つめ直してみる良いきっかけとなった。
この5段階説はあくまで心理学の視点での分類ではあるが、これまでに働く意義を考えたことがなかったような場合は、一度この説の分類をきっかけとして自分は何のために働いているのか?という点、見つめ直してみるのも面白いかもしれない。
▼Success is doing, not wishing.▼
本日もありがとうございました。